羊 /sheep/グースファンド/学名 Ovis aries
羊毛は羊から採取された毛のことですが、現在羊は3,000種に及ぶといわれるほど、人の手により改良が加えられてきました。学術的分類で表現すると、動物界・脊索動物門・脊椎動物亜門・哺乳綱・ウシ目・ウシ亜目・ウシ科・ヤギ亜目・ヒツジ属・ヒツジ(種)となります。家畜として飼育される前の羊は野生種でしたが、今日の飼育種の原種として考えられているグループは次の3つとされます。まだ遺伝学的に特定されていないが、アジアムフロン原種説が主流となっています。
◆ムフロン Ovis musimon およびOvis orientalis
中近東の山岳地帯に生息する。比較的小さな羊で、雄の角はアモン角で湾曲して大きい。
◆ウリアル Ovis vignei およびOvis arkal
インドからイラン北部にかけての山岳、ステップ地帯に生息。アルガリの亜種ともいわれる。
◆アルガリ Ovis ammon およびOvis poli
中央アジアの山岳地帯を中心に生息。最大の羊で、小型の牛ほどある。角も湾曲して巨大。
これらの羊から家畜化が始まりましたが、その用途としては食肉用とくに脂肪の摂取、そして採毛用です。多くの品種の中で最大のシェアを有する品種が、メリノ種です。このメリノ種は繊細な細毛が特徴で、原種は西アジア産だが、スペインで品種改良されたもの。南・西アジアではアワシ種が多く飼育されています。これらの羊は、伝統的には遊牧生活の中で飼育される。イランの場合は、わずかな牧草を求めて、移動する中で羊に食餌させながら生活を営むことになります。この生活形態も年々定住化の促進などにより減少しつつあります。イランの子羊のウールは、メリノ種などに比べて太く、長さも38cmに達するものもあります。
羊毛の特性
羊毛は独特の階層構造をもち、また、タンパク質繊維であることから、
次のような特性を有します。
◆弾力があり、保温性に富む。弾力性・保温性
羊毛繊維は、クリンプ(捲縮)しており、このクリンプが弾力性を生み、糸に膨らみをもたせる。この膨らみが、含気率を高め、保温性を向上させる。
◆湿気を吸収し、水を弾く。吸湿性(放湿性)・撥水性
羊毛繊維の表面は、疎水性で水を弾く一方、繊維内部は親水性であるため、吸湿性に富む。この性質が夏に湿気を取り、蒸れを防ぎ、肌にべとつかない快適感を与える。
◆型崩れやシワになりにくい。回復性
羊毛繊維はヤング率が大きい、すなわち負荷に対して変形しにくいという性向があるため、弾力性に優れ、もとの状態に回復しやすい。
◆フェルト化が起こる。縮充/縮絨・摩擦
羊毛繊維に熱と水分を含ませ、圧力を加えながら叩いたり揉んだりすると、繊維が絡み合って1枚の布(フェルト)になる。これはスケールの向きが逆のとき、ひっかかって滑らなくなるためである。この性質は絨毯のパイルや組織が摩擦力をもち、織り組織が分解しにくいことにも繋がる。
◆その他の特性
摩擦などにより、ピリング(ピル=毛玉)が生じる。蛋白質でできているため、アルカリに弱い。染まりやすい。白いものは日光で黄変する。虫害を受けやすい。難燃性である。…などの特性があります。
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