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ペルシア絨毯情報

絨毯に織り込まれたカリグラフィー

絨毯には頭部両脇部分のカルトゥーシュ内に文字が織り込まれており、右の星型カルトゥーシュには、アル・ソルターン・オッ=ソルターンal Soltan-os-Soltan、すなわちペルシア語でいうシャーハン=シャーShahan-Shah「王の中の王」という言葉をアラビア語表現にしたものが挿入され、左の星型カルトゥーシュの中にはアハマド・シャー・ガージャールAhmad Shah Qajarと織り込まれている。周囲のボーダーのカルトゥーシュにもナスタアリーグ体のペルシア語でフレーズが織り込まれている。

絨毯下部のキリム部に織り込まれた工房名。ナスタアリーグ体のペルシア語でバーフト・エスファハーン・セイラフィヤーンと銘が記されており、その両脇にラテンアルファベットで、イスファハーン、A セイラフィアンのサインが織り込まれている。

 
 

Calligraphy

モスクを美しく装うソルス体のカリグラフィー

​イラン・エスファハーン / エマーム・モスク

カリグラフィー

 

書が芸術となるのは、漢字文化圏とアラビア文字文化圏のみである。ラテン系文字は文字そのものに装飾が施されることはあっても、それが芸術として発展することはなかった。漢字は縦書きが基本である。縦に書いて左に改行してゆく。ラテン系文字は横書きである。これは左から右へと文字が書き進められ、下へと改行されてゆく。アラビア文字はこれに反し、横書きながら右から左へと文字が書き連ねられてゆく。さながら昔の日本語の横書きのこのアラビア文字はまずクルアーン(コーラン、すなわちイスラームの聖典)の文字として特別の存在となった。クルアーンの文字であるアラビア語は、神の言葉であり、それは美しく写し書かれなければならないものであった。クルアーンは、翻訳されることが許されず、イスラームの広がりと共に、アラビア文字圏を広げてゆくこととなった、このことは、日本に漢字が伝来したことを想定すれば、理解し易い。ただ違うところはひとつ、アラビア文字はラテン系文字同様、表音文字であったのに対し、漢字が表意文字を含んでいたことぐらいであろう。

 

かつてペルシアは西の文明であるメソポタミアの文字を使用していた。古代ペルシア語は、楔形文字で表されていたし、文字の借用はその時代の文化レベルや権勢などに左右されるものである。中世ペルシア語では、アラム文字から発展したパハラヴィー文字が使用され、近世ペルシア語としてアラビア文字を使用し始めるのは諸説あるものの7世紀後半から10世紀以降のことであった。

 

さて、アラビア語の書体に話を転ずれば、イスラーム初期にはクーフィー体が中心で、クルアーンの文字として用いられ、建築装飾の文字文様としてモスクを飾った。このアラビア文字の書体は、その後、さまざまな形態のものが考案され、10世紀アッバース朝宰相のイブン・ムクラによって、ナスフ体、ムハッカク体、ライハーン体、スルス体、タウキーウ体、リカーウ体(いずれもアラビア語音)の六書体が基本書体として制定された。

 

現在アラビア文字圏での書道は、12書体を基本形として、その形態美と技能を競っている。ペルシア語音で羅列すると、クーフィー体、モハッガグ・レイハーン体、ソルス体、トゥギー体、エジャーゼ体、レガーア体、ナスフ体、タアリーグ体、ディヴァーニー体、ロガア体、ナスタアリーグ体、シェキャステ体である。これらの書体の中で、ペルシア絨毯に最もよく用いられる書体は、ナスタアリーグ体であろう。ナスタアリーグ体は、14世紀に開発されたイスラーム書体の花嫁と形容される筆記体で、ペルシアにおける写本のテクストにも頻繁に使用される、最もペルシアらしい流麗な書体である。宗教的なものには、ソルス体やナスフ体が用いられることも多い。

 

ナスフ体は10世紀にクーフィー体から考案されたもので、丸みを帯びた書体で著作、印刷用に広く使用されている。またソルス体は、それをさらに装飾化したもので、本の表題や記事の見出しなどに使用されている。これらカリグラフィーは、文字として詩句や銘、解説などに意味をもつものとして配されるだけでなく、多分にその文字のもつ美を表現した装飾的要素を含んだものでもある。だから文字も装飾要素の役割を演じるために、左右相称のデザインの中では、平気で左右を逆転したような鏡文字が用いられているケース数多く見られる。また自らのサインを鏡文字で表す工房も見かける。絨毯に記される文字としては、工房名があり、ボーダーの上部あるいは下部中央のカルトゥーシュに収められる場合が多い。そのほか、注文主の名が織り込まれる場合があり、ガージャール朝の時代に地方の有力者の名が注文した証として織り込むケースが多くなった。近年では工房名がブランド名の如く織り込まれることが常態化され、ラテンアルファベットが併記されるものもある。

カルトゥーシュ / キャティーベ

カルトゥーシュとは、建築用語のいわゆる装飾枠であり、中にはさまざまな要素が充填される。絨毯に限らず、写本においてもカルトゥーシュは頻繁に使用されてきた。写本におけるカルトゥーシュは、ここに章名が入ったりする。絨毯でも文字や文様、図像が充填される。ペルシア語ではキャティーベkatibehという碑文を意味する語が用いられることがある。カルトゥーシュは自在に必要となる場所に配される。

 

伝統的な意匠では、メダリオン(トランジ)の先にカルトゥーシュが置かれ、さらにその先にペンダント(サル・トランジ)が配され、カルトゥーシュには銘が織り込まれることがある。もちろん充填されるのは文字に限らず、文様や図像が充填される場合も多い。またフィールドのヴァランスのよい場所に随意用いられることもある。

 

カルトゥーシュはその背景とは異なった要素を挿入して、注釈としたり、関連した図像を別扱いとして配したり、便利な役割を演じている。ボーダーにカルトゥーシュが用いられる場合、コーランや詩のフレーズが充填され、配列されることが多い。これらは、14世紀以降の写本の彩飾に用いられるようになったもので、その影響が強いものと思われる。

 

また、カルトゥーシュの形を変え、変化をもたせ配列される場合もある。カルトゥーシュの形態はさまざまであるが、本来はエジプトのファラオの名を取り囲むためのヒエログラフの一種で、フランス語でカルトゥーシュ、英語で言えばカートリッジ、薬包の意味となる。ヒエログラフとしては、横長の長円のような形である。

 

絨毯や写本では、これをもっと装飾的にアレンジした形となっているが、長円の変化したものに限らず、星型や不定形円のカルトゥーシュなど装飾枠全般に用いられる言葉である。このカルトゥーシュが絨毯のフィールド全体に反復して収められている意匠に出会うことも多い。サファヴィー期のものとしては、カルトゥーシュ反復文絨毯が、メトロポリタン美術館やリヨンの染織史美術館に収蔵されている。カルトゥーシュの中には動物闘争文などが充填されている。

 

近年のものとしては、いわゆる英語でいうコンパートメント・デザインである、ペルシア語ではガービーqabiあるいはガーブ・ガービーqab-qabiなどと呼ばれる。ガーブqabとは額縁のことである。

​ボーダーにカルトゥーシが用いられた肖像図絨毯。

描かれているのはガージャール朝最後の王アハマド・シャーAhmad Shah

出典/20世紀近代ペルシア絨毯の変遷

用語解説

カリグラフィーとは

文字を美しく見せるための手法/装飾書体文字

カルトゥーシュとは

カルトゥーシュとは、建築用語のいわゆる装飾枠のこと。本来はエジプトのファラオの名を取り囲むためのヒエログラフの一種で、フランス語でカルトゥーシュ、英語で言えばカートリッジ、薬包の意味となる。

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