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ペルシア絨毯情報

1.ペルシャ絨毯の文様について  

                                               

絨毯の文様がどのような要素から構成されているかを考えると、文様に対する考え方は写本芸術の中に類似した問題が潜んでいるように思える。イスラーム美術において、美の本質は文様であるといえるのかも知れない。建築、絵画、陶器、タイル、絨毯、織物、装丁、金属器、木工芸品、すべての美術を文様が埋め尽くしているといっても過言ではない。

 

絵画や造形美術をメジャーな美術とする西洋の観点からすれば、文様はあくまでメジャー美術を引き立てるための副次的な装飾要素であり、マイナーな美術であるという認識が存在する。しかし、イスラーム美術における文様は、明らかにメジャーな存在であり、絵(ミニアチュール)や文字(カリグラフィー)と同様に美の主体となっている。

イスラームの根幹ともいえる聖典クルアーン(コーラン)の写本は、アラビア語のテクストだけでなく、タズヒーブ(金彩装飾)で飾られていた。その後発達したさまざまな写本も、クルアーンを拠り所としてテクスト以外にナクシュ(絵画)とタズヒーブ(文様絵画)で構成されることとなった。このタズヒーブはやがて金泥だけでなく、紺、赤、緑、黄などさまざまな彩色がなされるようになり、文様のパターンも多様化、複雑化して文様絵画として発展していった。

 

とくにイル・ハーン朝で中国のモティーフが導入され、ティームール朝で高度の発展を遂げた。これが写本芸術で、能筆家によるカリグラフィー、細密画家による精緻な挿絵、その周辺や絵画を美しく装飾する文様絵画が画面を構成する。写本という二次元空間を埋め尽くす芸術は、同じような矩形の二次元空間を装飾する絨毯と相通じるものがあり、多分に写本芸術が絨毯芸術に大きな影響を与えてきたと思える。

 

2.写本絵画の技法と絨毯の文様                         

 

イスラームの写本絵画に関する画論や画家列伝などが15-17世紀に何点かまとめられている。その中に文様絵画の種類について触れている箇所があり、それぞれ書の六法に匹敵する文様絵画の七法(ハフト・アスル)が挙げられている。

具体的な文様は不明であるが文様の描法についての名は、次の通りである。

1564/65年のトプカプ宮殿に残る画帖の序文には、

ミール・サイイド・アハマドが、

●エスリーミー(eslimi蔓草文)

●ハターイー(khata’i花蔓草文)

●ファランギー(farangiヨーロッパ風)

●フィーシャーリー(fishariばらばら)

●アブル (abr雲文)

●ヴァーグ(vaqワークワーク文)

●ゲレ(gereh編み目)の7つを挙げている。

 

16世紀末に著されたサーデギー・ベグ(1533-1610)の『絵画の規範』には、

●エスリーミー

●ハターイー

●アブル

●ヴァーグ

●ニールーファル(nirufar蓮文)

●ファランギー

●バンデ・ルーミー(band-e rumi蔓草組紐文)の7つである。

 

1606年頃に著されたガーズィー・アハマドの『芸術の薔薇園』では、

●エスリーミー

●ハターイー

●ファランギー

●フィーシャーリー

●アブル

●アクラ(akra)

●サラーミー(salami)となっている。

 

これらの言葉で、一般にアラベスク文様を表すエスリーミー、ルーミー、ハターイーは現在も絨毯の文様に使われている言葉である。エスリーミーとは、「イスラーム風の」を意味し一般的な蔓草文を指す。さまざまな展開例を有する。ルーミーも同じような意味だが、こちらは「ルーム風の」すなわち「ローマ風の」「アナトリア風の」蔓草文となり、あるいは幾何学的な文様を指しているのかも知れない。ハターイーは「契丹すなわち中国北部風の」豪華な花文様を伴った蔓草文である。

 
 
 
 
 
 
 

 

因みに、ファランギーは「フランクすなわちヨーロッパ風の」を意味し、19世紀以降に絨毯モティーフに採用されるようになったゴレ・ファランギー(ヨーロッパ風の花あるいはバラ)などに使われている。アブルも中国風の雲文であろうし、霊芝雲などから発展したと考えられる「雲のリボン(クラウド・バンド)」などの古典的な絨毯モティーフがある。

ヴァーグは、もしアラブの伝説によるワークワークの木に語源を求めるならば、動物モティーフを伴った蔓草文ということになる。ワークワークの木とは、海の彼方の島で人間もしくはその頭部が木に実り、ワークワークと声を出すというもので、このワークが、倭国に比定されたこともある興味深い伝承である。これがペルシアでは、動物の頭部が蔓草文となって展開される。カーシャーンやムガルの絨毯にもこの意匠をもつ奇妙な絨毯が数多くあり、西洋では美術用語を使い「グロテスクgrotesque(洞窟風)」と表現されている。次に絨毯の文様あるいは構成要素の主だったものに目を向けてみる。

3.絨毯に用いられている代表的文様(モティーフ)とその名称

◆エスリーミー文 Eslimi (Arabesque) / エスリーミー

アラベスク、あるいは唐草文と呼ばれるイスラーム独特のパターンは、無限に展開される植物文で、さまざまなヴァリエーションで世界中にひろがったデザイン・パターンでもある。アラベスクとはアラビア風の意味であり、その曲線で構成された図柄は、ペルシア語ではエスリーミーと呼ばれている。

(連花葉文のページで補足解説)

◆連花葉文  Khatay  / ハターイー

ハターとは中国北部の契丹を意味するペルシア語である。伝統的な花文デザインで、パルメットやザクロ花文、葉文様が蔓で繋がった意匠で、契丹起源の意匠という説と、エスリーミーと逆の展開を見せるパターンで、別のスペルのハター(誤り)からきた言葉という説がある。

(連花葉文のページで補足解説)

◆ヘラーティー文 Heart pattern  / ヘラーティー(マーヒー)

アカンサス(ハアザミ)の葉が様式化され、菱形に組みあわさってできた花文のモティーフは、ペルシアのヘラート(現アフガニスタン)に起源があると考えられてきたことからヘラーティーと呼ばれている。このヘラーティー・パターンを反復したデザインが北西ペルシアなどでよく用いられ、この葉の形が魚に似ることよりマーヒー(ペルシア語で魚)と呼ばれる。

(連花葉文のページで補足解説)

◆シャー・アッバースィー(パルメット)文  Shah Abbasi   / シャー・アッバースィー

蓮、牡丹、百合などの花、また棕櫚や椰子の細長い葉とされるパルメットは、ちょうどロゼット文が花を俯瞰で見ているように表現されるのに対し、横から見た花の断面といった趣のデザインである。豪華なパルメットは、芸術復興期であったサファヴィー朝ペルシアの英主アッバース大王の名をとって、シャー・アッバース・デザインと呼ばれている。

(連花葉文のページで補足解説)

*パルメットとロゼット Palmette & Rosette

パルメットとはナツメヤシpalmの葉を意味し、ロゼットとはバラroseに由来する円花文のことである。またパルメットはロータス(睡蓮)の花という解釈もあり、形としては左右対称の扇のように広がった図形である。一方ロゼットも蓮華という考え方があり、こちらは放射状に花弁が広がった図形となる。ともにエジプト、ギリシアと伝わった文様用語でさまざまな展開を見せている。

(連花葉文のページで補足解説)

◆雲のリボン(馬蹄文) Cloud band / エスリーメ・マーリー

中国から伝わったといわれる文様で、形から雲のリボンと訳されているが、霊芝文様に由来すると考えられている。ペルシアではエスリーミーの一部あるいは変形で、蛇のような(マーリー)形の曲線文様として理解されている。

◆ゴル・ファランギー  European flower motif  / ゴレ・ファランギー

ヨーロッパの花を意味するゴル・ファランギーは、19世紀以降に現れたモティーフで、それまではこのように花を具象的に表現することはあまりなかった。このモティーフは花束のように表現されることもあり、ブーケ・デザインとも呼ばれる。

◆ボテ文 Boteh (Paisley) motif / ボテ

ボテと呼ばれるこの植物モティーフは、ペルシア語で潅木、を表す語、ボッテあるいはブーテで、絨毯用語としてはボテと表現されることが多い。この形象のモティーフはイランでもかなり古い時代から見られ、イランあるいはインド起源の文様とされている。小さいボテの連続柄は、ボテ・ミールと呼ばれている。

*ペイズリー柄とボテ文

インドのカシミールやイランのケルマーンのショールは、17-19世紀のヨーロッパで大流行し、これを模してイギリスのペイズリー市で大量生産されたことから、そのショールの文様はペイズリー柄の名で親しまれるようになった。毬果文とも呼ばれるこのボテ文は、糸杉、女性の涙、種子、葉、松ぼっくり、ゾロアスター教の聖火、魔除けの凶眼などさまざまな起源説や解釈があり、絨毯の中で扱われるデザインも幾何学的に様式化したボテ文や子持ちボテ、装飾が施されたボテ(ボテ・ジェッゲ)など、実に多彩である。

エスリーミー

イスラーム風蔓草文

ハターイー

契丹風蔓草文

ゴレ・ファランギー

(ヨーロッパ風の花あるいはバラ)

​雲のリボン

クラウド・バンド

ヴァーグ

動物モティーフを伴った蔓草文

ヴァーグ

動物モティーフを伴った蔓草文

カシミール・ショール(部分)

 
 
 
 
 
 

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