ペルシア絨毯の素材/絹(シルク)に関する雑学2

① 蚕/silkworm/ケルメ・アブリーシャム/学名 Bombyx mori

絹は動物性繊維に属し、絹の原料となる繭(まゆ cocoon ピーレ)をつくる蚕(チョウ目カイコガ科)の種類によって、家蚕絹と野蚕絹に大別される。家蚕絹は人類が数千年をかけて家畜化し、屋内での飼育を可能にした繭から採取されるもので、野蚕絹は野生の生息域から直接採取するきわめて希少な絹となる。イランのギーラーンやマーザンダラーンにおける一般的な家蚕の飼育は、春から始まる。蚕卵を購入し、数日かけて孵化させると1週間ほどで幼虫は脱皮を始める。桑を大量に与え、飼育すると2ヶ月足らずで、脱皮を繰り返して成長し、変態の過程で繭をつくり始める。蚕は口のあたりにある2つの小さな開口部から、非常に細い2本の単繊維物質を放出する。この単繊維はセリシンと呼ばれる粘着性の物質で覆われ、空中で乾燥する。この繊維が繭糸で、8の字を描きながら分泌され、繭を形成する。採取された繭は、熱風乾繭装置で殺蛹(さつよう)され、そのまま輸出される場合もあれば、国内用には製糸、精練されて市場に出回ることとなる。野蚕の繭は、繭を破って蛾が羽化するため繊維が切断されるが、家蚕では繋がった長い繊維(フィラメント糸)を得ることができる。

② 絹の歴史

シルクロードが、絹を東洋から西洋へ運んだルートであったことに表徴されるように、その発祥とされる中国では紀元前3千年紀、すでに養蚕は行われていたとされている。これは新石器時代にまで遡る夏王朝の伝説で、黄帝の后、西陵氏が絹の製法と織物を創始したというものと、さまざまな考古学的発見によるものが基準となっている。そして紀元前2世紀には、遠くギリシア・ローマ世界で絹の織物が高い人気を博している。中国における絹の製法は門外不出であり、玄奘は、中国の公主ルグザカ(Lu-si)が5世紀ホータン王に降嫁するとき家蚕の蚕種を持ち出したという蚕種西漸伝説を伝えている。また6世紀、ペルシア人(533年)あるいはセリンダの僧2人が杖に蚕卵を隠して持ち出し、ユスティニアヌス1世に献上したといった話も伝えられている。絹の製法は、ホータンからヤルカンド、フェルガーナ、そしてペルシアのカスピ海沿岸地方へと広まったものと考えられている。7世紀の初めには、ビザンティウムは自国産業およびヨーロッパへの輸出に足る十分な絹を生産することができたし、絹の製法はこの当時、おそらく世界中に広がっていた。

③ 絹糸の特性

絹も羊毛同様、蛋白質でできており、その構造から次のような特性をもつ。

◆美しい光沢をもつフィブロイン繊維が三角形であることは、プリズムと同じように糸の中で光が反射し、また内部に吸収された光も複雑な反射、屈折により表面に出るため、落ち着いた光沢となる。また絹は鮮明で深みのある色に染まる。フィブロイン繊維が蛋白質であり、構造的にも色素が浸透しやすく、種々の染料で染めることができるという優れた性質をもつ。

◆デリケートな繊維

絹はよく染まる一方、色の堅牢度はそれほど高くない。水滴などが繊維につくと、その部分の色が薄くなり、輪状のしみになる場合がある。「輪じみ」「色泣き」などと表現され、水分で撚りが戻り、色に変化が生じる場合もある。また摩擦や酸、アルカリにも弱く、日光に当たると黄変するなど、非常にデリケートな繊維といえる。

④ 絹糸の制作

絹糸の準備には繭から生糸を生産する工程である「製糸」と生糸から練絹を得る「精練」の工程がある。

◆製糸工程

製糸の工程は、乾繭(かんけん)、煮繭(しゃけん)、繰糸(そうし)の作業から成る。乾繭は、熱風、赤外線などで蛹(さなぎ)を乾燥・殺蛹し、繭の長期保存を可能にする。煮繭は、繭から繭糸の糸端、すなわち「糸口」(いとくち)を見つけ、最後まで繭がほぐれるようにするために行う。高温水につけ、セリシンを溶解させ、7-8粒程度の繭の糸口を合わせて、繰糸機にかける。

◆精錬工程

フィブロイン繊維を覆っているセリシンは、4層ほどで構成され、どの層まで除去するかは、練絹の光沢や感触だけでなく、耐久性にも影響する。セリシンの溶解分離には、弱アルカリの石鹸を使用したり、高温高圧水や蛋白質分解酵素が利用されたりする。

◆絨毯用の絹糸

絹糸はイランでは次のようなランク分けがなされ、通常「綛」(かせ)にして売られている。

●ダーネ…最上級の絹糸で、主に絨毯のパイル用に使用 される。

●ハシュティー…中級品で、絨毯の経糸用に使用される。

●プーディー…下級品で、絨毯の緯糸用に使用される。

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